Q&A

グループ法人税制

 

資本金等・利益積立金の増減処理が必要となる平成22年度改正

※『詳解 グループ法人税制』(法令出版)に問8として掲載

 グループ法人税制とされているものの中にも、資本金等や利益積立金の増減の処理を行う必要があるものがいくつかあるようですが、平成22年度の改正項目で、資本金等や利益積立金の増減の処理を行う必要があるのは、どのようなものでしょうか。

要 旨

 平成22年度改正においては、益金の額・損金の額や資産の取扱いに関してさまざまな改正が行われていますが、これらの改正に伴って、資本金等や利益積立金の増減の処理を行うことが必要となるものがいくつかあります。
 これらの中には、適格合併と適格分割型分割において、被合併法人や分割法人から引き継がれるものを利益積立金から資本金等に変更したことによって、新たに改正を行わなければならなくなったものなども含まれており、その増減の処理の内容は一様ではありません。
 資本金等や利益積立金の増減の処理を行うことが必要となるものは、次の表のとおりです。

 

〈資本金等〉
法令8の該当号 増減を生じさせる改正の概要 増 減 処 理

○ 適格合併においては、合併法人が被合併法人から資本金等の引継ぎを受けることとされました。

 

○ 無対価の適格合併の場合に合併法人が被合併法人から引継ぎを受ける資本金等について、規定が整備されました。

 

抱合株式がある場合の合併法人の増加資本金等の額の計算について整備が行われました。

◇ 適格合併の場合、合併法人において増加する資本金等は、被合併法人のその適格合併の日の前日の属する事業年度終了の時における資本金等に相当する金額とされました。

 

◇ 無対価の適格合併の場合、合併法人において増加する資本金等は、被合併法人のその適格合併の日の前日の属する事業年度終了の時における資本金等に相当する金額から抱合株式がある場合のその抱合株式の合併直前の帳簿価額を減算した金額とされました。

 

◇ 抱合株式がある場合、次の金額を合併法人の増加資本金等の額の計算上減算することとされました。

 

イ 適格合併の場合には、抱合株式の合併の直前の帳簿価額

 

ロ 非適格の吸収合併の場合には、抱合株式の合併の直前の帳簿価額にその抱合株式に交付されるべき金銭及び金銭以外の資産の価額の合計額のうち配当とみなされる金額を加算した金額

 

ハ 非適格の新設合併の場合には、抱合株式に交付されるべき金銭及び金銭以外の資産の価額の合計額

 

※ ロとハの非適格合併について、改正前と比較すると、改正前に抱合株式の譲渡損益として損金の額又は益金の額とされていた金額が資本金等とされていることになります。

○ 適格分割型分割においては、分割承継法人が分割法人から資本金等の引継ぎを受けることとされました。

 

○ 無対価の適格分割型分割の場合に、分割承継法人において引継ぎを受ける資本金等について、規定が整備されました。

◇ 適格分割型分割の場合、分割承継法人において増加する資本金等は、分割法人の減少資本金等に相当する金額とされました。

 

◇ 無対価の適格分割型分割の場合、分割承継法人において増加する資本金等は、分割法人の減少資本金等の額に相当する金額から分割承継法人が有する分割法人株式がある場合のその分割法人株式に係る分割純資産対応帳簿価額(分割法人株式の帳簿価額に分割移転割合を乗じて計算した金額)を減算した金額とされました。


(旧十一)

○ 無対価の非適格株式交換においては、株式交換完全親法人は、資本金等を増加させず、その株式交換により移転を受けた株式交換完全子法人の株式の価額に相当する受贈益を計上することとされました。

◇ 無対価の非適格株式交換の場合、株式交換完全親法人においては、資本金等を増加させないこととされました。

十五
(旧十六)

分割型分割の場合のみなし事業年度を廃止したことに伴い、分割型分割の場合に分割法人において減少する資本金等について、改正が行われました。

 

○ 無対価の適格分割型分割の場合に、分割法人が分割承継法人に引き継ぐ資本金等について、規定が整備されました。

◇ 分割型分割の場合、分割法人において減少する資本金等は、適格・非適格ともに、次のとおりとされました。

 

 分割法人の分割型分割の直前の資本金等の額 ×(分割型分割の直前の移転資産の帳簿価額 − 移転負債の帳簿価額)/(分割型分割の日の属する事業年度の前事業年度終了の時の資産の帳簿価額 − 負債の帳簿価額)

 

◇ 無対価の適格分割型分割の場合、分割法人において減少する資本金等の額(減少資本金等の額)は、分割法人の分割型分割の直前の資本金等の額に分割移転割合を乗じた金額とされました。

十六
(旧十九)

○ 「現物分配」・「適格現物分配」の制度を創設したことに伴い、資本の払戻し等(法人税法24条1項3号(配当等の額とみなす金額)に規定する資本の払戻し及び解散による残余財産の一部の分配)による現物分配を行った法人の資本金等の減少額について、規定が整備されました。

◇ 資本の払戻し等(法人税法24条1項3号(配当等の額とみなす金額)に規定する資本の払戻し及び解散による残余財産の一部の分配)による現物分配を行った法人は、次の算式により計算した資本金等を減算することとされました。

 

(資本の払戻し等の直前の資本金等の額)×(資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額又は解散による残余財産の一部の分配により交付した資産のその交付の直前の帳簿価額)/(資本の払戻し等の前事業年度終了の時の資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を減算した金額)

十七
(旧二十)

○ 自己株式の取得等(法人税法24条1項4号から6号までに掲げる事由)による現物分配を行った法人の資本金等の減少額について、規定が整備されました。

◇ 自己株式の取得等(法人税法24条1項4号から6号までに掲げる事由)による現物分配を行った法人は、次の算式により計算した資本金等を減算することとされました。

 

イ 自己株式の取得等のうち、一種類の株式を発行していた法人(口数の定めがない出資を発行する法人を含みます。)が行うもの 

 

 (自己株式の取得等の直前の資本金等の額)×(自己株式の取得等に係る株式の数)/(自己株式の取得等の直前の発行済株式(自己が有する自己の株式を除く)の総数)

 

ロ 自己株式の取得等のうち、二以上の種類の株式を発行していた法人が行うもの

 

 (自己株式の取得等の直前のその自己株式の取得等に係る種類の株式と同一の種類の株式に係る種類資本金額)×(自己株式の取得等に係るその種類の株式の数)/(自己株式の取得等の直前のその自己株式の取得等に係る種類の株式(自己が有する自己の株式を除く)の総数)

十八
(旧二十一)

○ 適格現物分配によって自己の株式を取得した場合の現物分配法人における資本金等の減少額について、規定が整備されました。

◇ 自己の株式の取得(適格合併等による引継ぎを含み、17号の自己株式の取得等に該当するものを除く)を行った法人は、対価の額に相当する金額の資本金等を減算することとなりますが、適格現物分配によって自己の株式を取得した場合には、その現物分配法人における適格現物分配の直前の帳簿価額に相当する金額の資本金等を減算することとなります。

十九
(新設)

○ みなし配当が生ずる際の株式の譲渡損失額・譲渡利益額を計上させないこととしたことに伴い、それらの金額に相当する金額を資本金等の減少額・増加額とすることとされました。

◇ 次のイからハまでに該当する場合には、次の算式により計算した金額が、株主における資本金等の減少額とさまた。

 

イ  完全支配関係がある他の内国法人の法人税法24条1項各号に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合の当該他の内国法人の株式の譲渡

 

ロ  完全支配関係がある他の内国法人の法人税法24条1項各号に掲げる事由により他の内国法人の株式を有しないこととなったこと(イに該当するものを除く)

 

ハ  完全支配関係がある他の内国法人の残余財産の分配を受けないことが確定したこと

 

 (みなし配当の額)+(譲渡対価とされる金額)-(交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額)


〈資本金等〉

法令9の該当号 増減を生じさせる改正の概要 増 減 処 理

○ 100%グループ法人内の法人間での寄附があった場合、寄附を受けた法人においては、所得は増加させないものの、利益積立金は増加させることとされました。

 

○ 100%グループ法人内の法人間の非適格合併による資産の移転についても譲渡利益金額又は譲渡損失金額の繰延べの対象とされたことに伴い、合併法人において、資産の取得価額を被合併法人における帳簿価額とすることとし、資産の時価と被合併法人における帳簿価額との差額を利益積立金とすることとされました。

◇ 100%グループ法人内の法人間での寄附があった場合に益金不算入とされた受贈益に相当する金額について、利益積立金の増加額とされました。

 

◇ 100%グループ法人内の法人間の非適格合併における合併法人において、譲渡損益調整資産の取得価額に算入しない金額から譲渡損益調整資産の取得価額に算入する金額を減算した金額は、その合併法人の利益積立金の減少額とされました。

○ 適格合併においては、合併法人は、被合併法人から資本金等の引継ぎを受け、移転簿価純資産額のうちの残りの部分について、利益積立金を増加させることとされました。

 

○ 無対価の適格合併の場合に、合併法人において増加させる利益積立金について、規定が整備されました。

◇ 適格合併における合併法人において増加させる利益積立金は、次の算式によることとされました。

 

  被合併法人の適格合併の日の前日の属する事業年度終了の時の移転資産の帳簿価額 -(被合併法人の適格合併の日の前日の属する事業年度終了の時の移転負債の帳簿価額 + 増加資本金等の額)

 

◇ 無対価の適格合併の場合、合併法人において増加させる利益積立金については、適格合併に係る被合併法人から移転を受けた資産及び負債の移転簿価純資産価額からその適格合併により増加した資本金等及び抱合株式がある場合のその抱合株式の合併直前の帳簿価額の合計額を減算した金額とされました。

○ 分割型分割の場合のみなし事業年度を廃止したことに伴い、適格分割型分割の場合に分割承継法人において増加させる利益積立金について、改正が行われました。

 

○ 無対価の適格分割型分割の場合に、分割承継法人において増加させる利益積立金について、規定が整備されました。

◇ 適格分割型分割の場合、分割承継法人において増加させる利益積立金は、次のとおりとされました。

 

 分割直前の移転資産の帳簿価額 -(分割直前の移転負債の帳簿価額 + 増加資本金等の額)

 

◇ 無対価の適格分割型分割の場合、分割承継法人において増加する利益積立金については、分割法人から移転を受けた資産及び負債の移転簿価純資産価額からその適格分割型分割により増加した資本金等及び分割承継法人が有する分割法人株式がある場合のその分割法人株式に係る分割純資産対応帳簿価額との合計額を減算した金額とされました。

○ 適格現物分配について現物分配法人の資産の帳簿価額による譲渡とされたことに伴い、被現物分配法人において、その帳簿価額に相当する金額の利益積立金を増加させることとされました。

◇ 剰余金の配当若しくは利益の配当又は剰余金の分配の場合には、被現物分配法人は、その交付を受けた資産の現物分配法人におけるその交付の直前の帳簿価額に相当する金額を利益積立金に加算することとされました。

 

 また、法人税法24条1項3号から6号までの資本の払戻し等の場合には、被現物分配法人は、その交付を受けた資産の現物分配法人におけるその交付の直前の帳簿価額に相当する金額から現物分配法人の資本金等のうちその交付の基因となったその現物分配法人の株式又は出資に対応する部分の金額(法法24①、法令23①三・四)を除いた金額を利益積立金に加算することとされました。

○ 100%グループ法人内の法人間での寄附があった場合の特例を設けたことに伴い、子法人株式の帳簿価額を修正するいわゆる「寄附修正」を行うこととされました。

◇ 法人が有する子法人の株式又は出資について寄附修正事由が生ずる場合の受贈益の額にその寄附修正事由に係る持分割合を乗じて計算した金額から寄附修正事由が生ずる場合の寄附金の額にその寄附修正事由に係る持分割合を乗じて計算した金額を減算した金額が、利益積立金の加算項目とされました。


(旧七)

○ 適格現物分配について現物分配法人の資産の帳簿価額による譲渡とされたことに伴い、現物分配法人において、その帳簿価額に相当する金額の利益積立金を減少させることとされました。

◇ 適格現物分配における現物分配法人は、剰余金の配当若しくは利益の配当又は剰余金の分配の場合には、その交付した資産のその交付の直前の帳簿価額に相当する金額の利益積立金を減算することとされました。

○ 分割型分割の場合のみなし事業年度を廃止したことに伴い、適格分割型分割の場合に分割法人において減少する利益積立金について、改正が行われました。

 

○ 無対価の適格分割型分割の場合に、分割法人において減少させる利益積立金について、規定が整備されました。

◇ 適格分割型分割で分割法人において減少する利益積立金は、次のとおりとされました。

 

 分割直前の移転資産の帳簿価額 - (分割直前の移転負債の帳簿価額 + 減少資本金等の額)

 

◇ 無対価分割が行われた場合で適格分割型分割と判定されるときに分割法人において分割法人の減少する利益積立金については、その分割型分割の直前の移転資産の帳簿価額から移転負債の帳簿価額及びその減少資本金等の額の合計額を減算した金額とされました。

十一(旧九)

十二(旧十)

○ 現物分配法人が法人税法24条1項3号から6号までに掲げる資本の払戻し等の現物分配を行った場合に減少させる利益積立金について、規定が整備されました。

◇ 現物分配法人は、法人税法24条1項3号から6号までに掲げる資本の払戻し等の適格現物分配を行った場合には、交付した資産の交付の直前の帳簿価額からその減少する資本金等を減算した金額の利益積立金を減算することとされました。