Q&A

国際税制

 

外国法人の株式等の保有割合の判定における株式等の持合いの取扱い

※T&Amaster(ロータス21)2011.2.14  No.390 に掲載

1.外国子会社合算税制における外国法人の株式等の保有割合
 外国子会社合算税制については、租税特別措置法66条の6(内国法人に係る特定外国子会社等の課税対象金額等の益金算入)等に具体的な定めが設けられていますが、本制度においては、外国法人の株式等の保有割合により、内国法人がその適用を受けることとなるのか否か、また、外国法人がその適用対象となる外国関係会社に該当することとなるのか否かということを判定することとなります。
 このように、外国子会社合算税制においては、外国法人の株式等の保有割合の計算は、非常に重要となるわけですが、外国法人間で株式等の持合いがあった場合にこれをどのように計算するのかということは必ずしも明確になっているとは言えない、と考えます。
 このため、本稿においては、外国法人間で株式等の持合いがあった場合にこの外国法人の株式等の保有割合をどのように計算するのかということについて、法令の規定に則して、解説を行うこととします。

 

(1)外国子会社合算税制の適用を受ける内国法人の判定
 外国子会社合算税制は、次に掲げる内国法人に対して適用することとされています。

 

ⅰ 外国関係会社の発行済株式等の10%以上を直接及び間接に保有する内国法人(措法66の6①一)

ⅱ 外国関係会社の発行済株式等の10%以上を直接及び間接に保有する一の同族株主グループに属する内国法人(上記ⅰに該当する内国法人を除きます。)(措法66の6①二)

 

(2)外国子会社合算税制の適用対象となる外国関係会社の判定
 上記(1)ⅰ及びⅱの「外国関係会社」とは、外国法人で、その発行済株式等のうちに居住者及び内国法人並びに特殊関係非居住者(以下、「内国法人等」といいます。)が直接及び間接に保有する株式等の数又は金額の合計数又は合計額の占める割合が50%を超えるものをいいます(措法66の6②一)。

 

(3)株式等の保有割合の計算
 上記(1)及び(2)の株式等の保有割合に関しては、内国法人が直接に外国法人の株式等を保有している場合には、その計算に疑義が生ずることはありません。
しかし、内国法人が間接に外国法人の株式等を保有している場合には、その保有割合をどのように計算するのかという点に注意が必要となります。このため、まず、内国法人が外国法人の株式等を間接に保有している場合に、その株式等の保有割合をどのように計算することとなっているのかということを確認しておきましょう。
租税特別措置法施行令39条の16(内国法人に係る特定外国子会社等の課税対象金額の計算等)の3項においては、本制度の適用を受ける可能性のある内国法人と本制度の適用対象となる外国関係会社に該当する可能性のある外国法人との間に、他の外国法人が存在する場合(同項1号)と、更に当該他の外国法人と当該外国法人との間に他の外国法人(以下、「出資関連外国法人」といいます。)が存在する場合(同項2号)とに分けて、株式等の保有割合の計算が示されています。その内容は、算式のとおり、いずれも、各段階の保有割合を乗ずることによって内国法人が間接的に保有する割合を求めるものとなっています。

 

【算式】株式等の保有割合の計算

イ 外国法人の株主等である他の外国法人の発行済株式等の全部又は一部が個人又は内国法人により所有されている場合の株式等の保有割合

 

 

  当該他の外国法人が2以上ある場合には、2以上の当該他の外国法人につきそれぞれ計算した割合の合計割合となります。

 

ロ 外国法人と他の外国法人との間に1又は2以上の外国法人(出資関連外国法人)が介在している場合であって、個人又は内国法人、当該他の外国法人、出資関連外国法人及び当該外国法人が株式等の所有を通じて連鎖関係にある場合の株式等の保有割合

 

 

  当該連鎖関係が2以上ある場合には、当該2以上の連鎖関係につきそれぞれ計算した割合の合計割合となります。

 

2.株式等の持合いがあった場合の外国法人の株式等の保有割合
 上記1(3)の算式イ及びロの株式等の保有割合の計算は、株式等の持合いがなければ、特に難しい問題は生じません(注)。

 (注)株式等の所有を通じて連鎖関係にある場合に、他の外国法人や出資関連外国法人について、その株主等による株式等の直接の保有割合が50%以下となっているときは、当該他の外国法人や出資関連外国法人が直接又は間接に保有する外国法人の株式等を外国子会社合算税制における株式等の保有割合に含めないという見解も見受けられますが、外国子会社合算税制における外国法人の株式等の保有割合の計算においては、各段階の株式等の保有割合がどのように低い割合となっていたとしても、各段階の保有割合を乗じて計算することに変わりはありません。

 以下、株式等の持合いがあるケースについて、外国法人の株式等の保有割合の計算がどのようになるのかということを検討してみましょう。次の図1は株式等の持合いがないケースで、図2は出資関連外国法人間に株式等の持合いがあるケースです。

 

【図1】株式等の持合いがないケース

 

【図2】出資関連外国法人間に株式等の持合いがあるケース

 

 図1における外国法人の株式等の保有割合の計算が上記四角囲みの中の括弧書きのとおりとなることに疑義はないはずですが、図2のように、出資関連外国法人bが出資関連外国法人aの株式等を持ち、双方の法人に株式等の持合いがある場合に、外国法人の株式等の保有割合の計算がどうなるのかということが問題となります。要するに、株式等の持合いを考慮せずに外国法人の株式等の保有割合を計算してよいのか否か、ということです。
 この問題を検討するに当たっては、まず、該当条文の規定を確認しておく必要があります。租税特別措置法施行令39条の16第3項2号においては、次のように定められています。

「 当該外国法人と他の外国法人(省略)との間に一又は二以上の外国法人(この項において「出資関連外国法人」という。)が介在している場合であつて、当該個人又は内国法人、当該他の外国法人、出資関連外国法人及び当該外国法人が株式等の所有を通じて連鎖関係にある場合 当該個人又は内国法人の当該他の外国法人に係る持株割合、当該他の外国法人の出資関連外国法人に係る持株割合、出資関連外国法人の他の出資関連外国法人に係る持株割合及び出資関連外国法人の当該外国法人に係る持株割合を順次乗じて計算した割合(当該連鎖関係が2以上ある場合には、当該2以上の連鎖関係につきそれぞれ計算した割合の合計割合)」

 このように、租税特別措置法施行令39条の16第3項2号においては、株式等の持合いがあった場合の取扱いに関する特別な定めは設けられていません。このため、法令の規定の文理解釈による限りは、株式等の持合いの有無は、外国法人の株式等の保有割合の計算には関係がない、ということになります。
 また、本税制が創設された昭和53年度改正に関する『改正税法のすべて』においても、株式等の持合いがあった場合の取扱いに関する言及はなく、国税庁の解釈を示す租税特別措置法関係通達にも、株式等の持合いに関する解釈は示されていません。
 しかし、本税制の創設に携わったとされる旧大蔵省主税局の職員が創設直後に執筆した解説書 には、「出資関連外国法人同士、あるいは出資関連外国法人と他の外国法人とが互いにそれらの発行済株式等を持合っているようなケースも考えられるが、法令上は、この点について特に規定していない。しかしながら、たとえ株式等の持合いがあったとしても、一方の出資割合は当然ながら度外視すべきであり、・・・」とされています。
 このような点からすると、本税制における外国法人の株式等の保有割合の計算においては、株式等の持合いがあったとしても、それを考慮せずに計算する、ということになるものと考えられます(注)。

(注)株式等の持合いがあった場合となかった場合の実質的な株式等の保有割合がどのようになっているのかということを考えてみると、図2の出資関連外国法人bの株式等の50%を所有している他の株主等は出資関連外国法人aの株式等の10%(50%×20%)を実質的に所有しており、当該他の株主等と他の外国法人の他には出資関連外国法人aと出資関連外国法人bの株式等を所有する者はいませんので、内国法人は他の外国法人を通じて、実質的に出資関連外国法人aの株式等の90%を所有している、と見ることもできます。

 ところで、以上のように、株式等の持合い部分を内国法人の間接保有割合の判定において考慮しないとした場合には、出資関連外国法人bの出資関連外国法人aに対する出資割合を増やすことによって他の外国法人の出資関連外国法人aに対する出資割合を減らし、内法の外国人に対する株式等の保有合を引き下て本制の適用を受けないようにする、といったことが可能となります。株式等の持合いによって、本税制の適用関係が変わることとなるわけです。
 しかし、これは、株式等の持合いがあり、本税制の適用を受けないこととなっているケースがあった場合には、租税回避として税務調査等で否認されることがないかということをよく検討しておく必要がある、ということをも意味しています。
 このように、一種の「割切り」によって作らざるを得ない仕組みに係る部分に関しては、形式と実質に齟齬が生じたり、節税と租税回避の判断が難しいケースが生じたりすることを避けることはできません。実務に当たっては、このような事情をよく理解しておく必要があります。


i 高橋元監修『タックス・ヘイブン対策税制の解説』(清文社、昭和54年1月10日)122頁