Q&A

法人税制一般

 

法人税法における「種類株式」

※T&Amaster(ロータス21)2014.10.20  No.567に掲載

 平成18年度税制改正において、「種類株式」に関する取扱いが法人税関係法令の中のいくつかの規定に設けられ、発行法人の資本金等の額、株主のみなし配当の額や株式の譲渡損益の額が変わることになっていますが、そもそもどのようなものが「種類株式」となるのかということがよく分かりません。

 

 会社法においては、108条1項において、剰余金の配当等について内容の異なる株式を発行することができるものとされています。

 

 法人税法における「種類株式」の捉え方もこの会社法における種類株式の捉え方と同様と考えて良いのでしょうか?

 

要 旨

【マエストロの解説】

 

 法人税法における「種類株式」の捉え方が平成18年度税制改正によって変わったわけではない。

 

 法人税法における「種類株式」に関しては、会社法における種類株式よりも範囲が広く、定款に記載されていなかったり株主総会の決議を経ていなかったりするものも含まれる。

 

1 会社法における種類株式

 

 会社法108条1項においては、「株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる2以上の種類の株式を発行することができる。ただし、委員会設置会社及び公開会社は、第9号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。」として、1号から9号までに剰余金の配当などが掲げられている。

 

 そして、会社法108条2項及び3項において、これらの株式を発行する場合には定款又は株主総会の決議に拠るべきこととされている。

 

 すなわち、会社法においては、種類株式の内容が108条1項1号から9号までに掲げられているものに限られており、しかも、定款に記載するか株主総会の決議を経るという手続を取ったものだけが種類株式となる、ということになっているわけである。

 

 ただし、会社法109条2項においては、株主平等の例外として「公開会社でない株式会社は、第105条第1項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。」とされており、剰余金の配当を受ける権利などに関して株主毎に異なる取扱いとする旨を定款で定めることができるものとされている。

 

 すなわち、会社法においても、非公開会社に関しては、剰余金の配当を受ける権利などについて、定款に定めることにより、種類株式を発行せずに、実質的に種類株式を発行した状態と同じ状態を創ることができるわけである。

 

 このように、会社法の規定だけを見ても、種類株式を発行するという方法と定款に記載するという方法によって株主に同じ権利を与えた場合に、その方法の相違のみを理由として、法人税法における取扱いを変えることになるのか、という問題が存在する。

 

2 法人税法における「種類株式」

 

(1)平成18年度税制改正における「種類株式」の定めの創設

 

 法人税関係法令に「種類株式」に関する定めを設けたのは、平成18年度税制改正であるが、同改正に関しては、次のように解説されている。

 

「② 2以上の種類の株式を発行する法人が自己の株式の取得等をした場合の減少する資本金等の額

 

 その法人が2以上の種類の株式を発行していた場合には、その減少する資本金等の額(以下「取得資本金額」といいます。)は、その取得等をする株式の種類ごとに区分した資本金等の額(以下「種類資本金額」といいます。)を基礎として計算することとされました(法令8①二十)。

 

 これまで種類株式については、株式が発行法人に取得される場合のみなし配当の額の計算において、いわゆる普通株式と種類株式とを区別せずに1株当たりの資本等の金額を計算し、それを超える部分の金額をみなし配当の額として(い:引用者追加)ましたが、この点について、諸々の指摘もあったところです。そこで今回の会社法の制定によりこれまで以上に多様な種類の株式の発行が想定されることとなったことを契機として、株式の種類ごとに資本金等の額を区分管理することによりこれらの各株式の種類の違いに応じた課税の取扱いとなるように見直しを行ったものです。」(財務省『平成18年度税制改正の解説』251頁)

 

 財務省の『平成18年度税制改正の解説』における上記の解説は「種類株式」の発行法人における資本金等の額に関するものとなっており、『平成18年度税制改正の解説』においては「種類株式」自体の捉え方に関して言及した部分は存在せず、平成18年度税制改正で「種類株式」の捉え方を変更する法令改正が行われているというわけでもない。

 

 平成18年度税制改正前には、次のとおり、旧法人税基本通達2-3-17において「普通株式と種類株式とが発行されている場合の銘柄の意義」という見出しで有価証券の譲渡損益に関する規定である法人税法施行令119条の2第1項の規定の解釈が示されていた。

 

「(普通株式と種類株式とが発行されている場合の銘柄の意義)

 

 2-3-17 法人が、他の法人の発行する普通株式と種類株式とを有する場合において、その種類株式の権利内容等からみて、当該種類株式が普通株式の価額と異なる価額で取引が行われるものと認められるときには、当該種類株式は普通株式と異なる銘柄の株式として、令第119条の2第1項《有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法》の規定を適用するものとする。」

 

 この旧法人税基本通達2-3-17は、平成18年度税制改正に合わせて平成19年の改正(平成19年課法2-3)で次のように改められている。

 

「(2以上の種類の株式が発行されている場合の銘柄の意義)

 

 2-3-17 法人が、他の法人の発行する一の種類の株式と他の種類の株式とを有する場合には、それぞれ異なる銘柄として令第119条の2第1項《有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法》の規定を適用するのであるが、それらの権利内容等からみて、その一の種類の株式と他の種類の株式が同一の価額で取引が行われるものと認められるときには、当該一の種類の株式と他の種類の株式は同一の銘柄の株式として、同項の規定を適用することに留意する。」

 

 この新旧の通達の文言を比較してみると直ぐに分かるとおり、平成18年度税制改正に伴う上記の通達改正は、法令の用語法に合わせた文言の改正に止まり、実質的な内容の改正は行われていない。

 

 なお、法人税関係法令及び平成19年改正後の法人税基本通達においては、「種類株式」という用語は用いられておらず、「種類の異なる株式」等の表現が用いられている。

 

(2)会社法と法人税法における捉え方の相違

 

  ① 会社法は「内容」に着目し、法人税法は「価額」に着目している

 

 法人税基本通達2-3-17においては、「種類株式」は「同一の価額で取引が行われる」のか否かに拠って分けて捉えるべきであるという考え方が採られており、同通達は、「種類株式」があるのか否かということは「価額」の相違に拠って判断するという考え方に基づくものと捉えて良いものであるが、この法人税における「種類株式」の捉え方は、上記の会社法における種類株式の捉え方と根本的に異なっていることに注目する必要がある。

 

 会社法においては、「内容」に着目して種類株式を捉えるのに対し、法人税法においては、「価額」に着目して「種類株式」を捉えることとしているわけである。

 

 法人税においては、「所得の金額」に課税を行うこととなることから、「価額」によって「種類株式」を捉えることには合理性があるものと考えられる。

 

  ② 会社法は内容と手続を限定して狭く捉え、法人税法は内容や手続を限定せずに広く捉えている

 

 会社法においては、種類株式の内容を108条1項各号に掲げるものに限定しており、同条2項又は3項の手続を経たものだけを種類株式としている。会社法109条2項によって設けることができる株主毎の剰余金の配当などに関する取扱いを定めた場合にも、その株主が有する株式を種類株式とは異なるものと位置付けた上で、その株式を同条3項において種類株式と「みなす」こととしている。

 

 このように、会社法における種類株式は、その内容と手続が限定されたものとなっている。

 

 これに対して、法人税法においては、「種類株式」の内容や手続に関する制限が設けられておらず、会社法における種類株式のみが「種類株式」となると解すべき事情は、全く存在しない。

 

 このため、法人税法においては、上記の会社法109条3項によって種類株式とみなされた株式も、108条1項の種類株式と区別せずに「種類株式」となるものと解される。

 

 この例からも分かるとおり、法人税法における「種類株式」は、会社法における種類株式よりも範囲が広くなっている。

 

  ③ 株主間契約等によって株主の権利義務に変更を加えた場合のその株主の株式は、会社法上は種類株式とはならないが、法人税法上は「種類株式」となる

 

 上記のとおり、会社法においては種類株式の範囲は狭くなっているが、従来から、特に非公開会社においては、種類株式を発行することなく、株主間契約等によってさまざまな内容の株式を設けることが行われてきている。

 

 平成17年の会社法の立案担当者であった者は、次のとおり、株主間契約等によってさまざまな株式の譲渡制限が設けられることがあるということ、そして、会社法の創設に際して新たに設けられた種類株式に関する規定が従来から株主間契約によって行われてきたものを法制化したものであるということを述べている。

 

「3 契約による譲渡制限

 

 実務においては、株主間の契約等により、他の当事者の承認なしに当該株式を譲渡できない旨の約定や一定の場合に株式の譲渡義務を設ける等の措置が採られることがある。

 

 例えば、従業員持株制度を利用している従業員が、退職時にその持株を従業員持株会に取得価格と同一価格で売却しなければならない旨の契約などがその典型である。」(葉玉匡美『新・会社法100問[第2版]』(ダイヤモンド社)183頁)

 

「取締役等選任権付株式は、合弁会社やベンチャー企業等において、取締役や監査役として、自己の利益を代弁してくれる者を必ず選任したい場合に発行される。これは、経営者である取締役を自派役員により監査・監督して、少数派株主の利益を守るための株式であり、従来は株主間契約で行っていたものを株式の内容として取り込んで保障したものである。」(同前207頁) 

 

 上記の会社法の立案担当者の解説にあるように会社法108条1項9号の種類株式である取締役等選任権付株式が「従来は株主間契約で行っていたものを株式の内容として取り込んで保障したもの」ということであれば、法人税法において、取締役等選任権付株式は平成18年度税制改正前は「種類株式」ではなく同改正によってはじめて「種類株式」となったということか、という疑問が生じてくることになる。

 

 しかし、上記(1)において確認したとおり、平成18年度税制改正においては、「種類株式」の捉え方を変更する改正は行われておらず、同改正に関する財務省の解説にもそのような変更を行った旨の記載は存在せず、また、「種類株式」の捉え方を示すこととなっている法人税基本通達2-3-17においても同改正に伴う内容の変更は行われていない。取締役等選任権付株式が平成18年度税制改正前は「種類株式」ではなく同改正によってはじめて「種類株式」となったと解すべき根拠は、どこにも存在しないわけである。

 

 このような点からすれば、上記の会社法の立案担当者の解説にある取締役等選任権付株式は、法人税法においては、平成18年度税制改正前においても、「種類株式」であり、「価額」が普通株式と異なる場合には銘柄の異なる株式として取り扱われていた、と解するのが適当と考えられる。

 

 要するに、法人税法においては、「種類株式」の内容や手続に関する制限がないことから、株主間契約等によって内容に変更が加えられて他の株式と価額が異なることとなっている株式は、その内容と手続が限定された会社法における種類株式と同様に、「種類株式」と捉えることとなり、会社法109条2項の規定の適用を受ける株式とともに、特に「みなす」こととせずとも、当初から「種類株式」ということになっているわけである。

 

 「株式」とは、株式会社における社員権のことであり、この社員権は、株主間契約等によって権利が拡張されたり権利が制限されたりすることも、当然、あるわけです。

 

(3)会社法と法人税法の適用対象の相違

 

 我が国の会社法は我が国の「会社」に対してのみ適用されるが、法人税法は我が国の「会社」以外の法人に対しても適用され、また、法人税法においては外国法人が発行した株式が「種類株式」となるのか否かということについても判断を行わなければならないことがある。

 

 特に、外国で発行された株式に関しては、我が国では認められない内容の種類株式が存在していたり、我が国で認められる種類株式が認められていなかったり、また、種類株式を発行する手続が我が国のそれとは異なっていたりするため、我が国の会社法における種類株式の内容と手続を基準として「種類株式」に該当するのか否かを判断することはできない。

 

 現実には、我が国よりも法制の制限が少ない国々が数多く存在しており、外国法人が発行する株式について、その外国における会社法上の種類株式の発行手続を経たものと株主間契約等によって実質的な種類株式を設けたものとを我が国の法人税法において異なる取扱いとするということになれば、同じ経済実態にあるものについて異なる課税を行うこととなるため、課税の衡平を害するとともに、租税回避を横行させる結果となることは、自明である。

 

 このような点からしても、我が国の法人税法においては、「手続」にかかわらず、普通株式との「価額」の比較を行うことにより、「種類株式」に該当するのか否かを判断する、ということでなければならない。