書物・出版物

詳解 グループ法人税制

朝長 英樹【編著】
竹内 陽一 緑川 正博 新沼 潮  掛川 雅仁 中尾 健 
鈴木 達也 石井 幸子 吉田 勤  池田 祐介 鷹取 俊浩
高橋 昭彦 室 和良 【著】

単行本・818ページ

法令出版(2011/04/15,2011/08/02)

定価4,200円(税込)

 

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はじめに

 

 本書は、平成22年度改正で措置された「グループ法人税制」に関して、質問と回答という形で、全体像の説明をさせていただくとともに、鼎談によって、論点と実務対応の説明をさせていただいております。

 

 「グループ法人税制」に関しては、その基本的な考え方や仕組みが分かり難く、納税者や税理士の皆様方に十分に理解されているとは言えない状況にあるように思われます。

 

 特に、個人が株式を保有している中小企業においては、そもそも「グループ法人税制」の適用があること自体を認識していないというケースが見受けられます。「グループ法人税制」は、法人が他の法人の株式を保有している場合だけでなく、個人とその親族が複数の法人の株式を保有している場合にも適用されることとなります。この「親族」は、6親等の血族と3親等の姻族にまで及ぶ非常に広範なものとなっています。税務調査において、「グループ法人税制」の適用が問題となるのは、多くの子会社を持つ大企業であるよりも、むしろ、個人とその親族が複数の法人の株式を保有する状態となっている中小企業となる可能性もあると考えられます。

 

 この「グループ法人税制」に関しては、これをうまく生かせば大きなメリットを得られる一方で、その適用を誤って大きな損失を被ったり、また、その適用があることを知らないまま大きなメリットを得る機会を失ったりするということが起こるおそれがあると考えられます。

 

 このような事情に鑑みて、本書においては、「グループ法人税制」に関して、著者が「書いてもよい」と思うことを書くという観点ではなく、読者が「知りたい」と思うことを書くという観点に立って、質問と回答の部と鼎談の部の双方において、極力、丁寧に記述を行うことを心掛けています。

 

 また、本書においては、「グループ法人税制」のベースとなっている組織再編成税制・資本等取引税制と連結納税制度の創設時まで遡って、これまであまり明らかになっていなかったこれらの立法の経緯等にも触れ、近年の「グループ」に関する税制をその起源から説き起こしています。

 

 このため、本書は、「グループ法人税制」の解説書に止まらず、組織再編成税制・資本等取引税制と連結納税制度について、読者の皆様方に他の類書には無い深度のある解説をお示しさせていただくものとなっていると考えています。

 

 本書が僅かなりとも読者の皆様方のお役に立つようであれば、幸いです。

 

 最後に、日々の業務に忙しい中で貴重な時間を割いていただいた各執筆者の皆様方と本書の出版にご尽力をいただいた法令出版の皆様方に、改めて御礼を申し上げます。

 

 平成23年3月

 

 執筆者・鼎談者を代表して
 日本税制研究所 代表理事
 朝長英樹

もくじ

 

第1部 グループ法人税制質疑応答
 序章 グループ法人税制の創設趣旨等 16
   1 グループ法人税制の適用対象グループ 17
   2 グループ法人税制の創設経緯等 19
   3 グループ法人税制の構成 23
   4 グループ法人税制の基本的な考え方 27
   5 グループ法人税制と単体納税・連結納税制度との関係 28
   6 グループ法人税制が100%グループ法人のみを対象とする理由 30
   7 資本金等の額・利益積立金額の改正 32

 第1章 グループ法人税制の概要 36
   1 資本金等・利益積立金の増減処理が必要となる改正 36
   2 資本金等・利益積立金の改正 47
   3 「グループ」とは 80
   4 「完全支配関係」とは 82
   5 グループの中にグループがあるのか 90
   6 親が替わったら兄弟の完全支配関係はどうなるのか 92
   7 「グループ税制」なのか「法人間関係税制」なのか 96
   8 「法人による完全支配関係」の「法人」が複数ということもあるのか 100
   9 「いずれか一方の法人による完全支配関係」と「同一の者による完全支
    配関係」とは(1) 102
   10 「いずれか一方の法人による完全支配関係」と「同一の者による完全支
    配関係」とは(2) 105
   11 「同一の者」や「一の者」が個人である場合の支配関係・完全支配関係の範
    囲 110
   12 「同一の者」が個人である場合の完全支配関係の具体例 117
   13 従業員持株会・株式持合いがある場合の「完全支配関係」の判定 131
   14 グループ法人税制の各取扱いの対象法人 134

 第2章 グループ法人間の譲渡取引 140
  Ⅰ 譲渡損益調整資産に係る譲渡損益の繰延べ 140
   1 譲渡損益繰延べの対象となる譲渡 140
   2 譲渡損益調整資産? 142
   3 譲渡損益調整資産? 142
   4 譲渡損益繰延べの対象資産? 145
   5 譲渡損益繰延べの対象資産? 146
   6 判定単位 147
   7 営業権等の取扱い 148
   8 譲渡損益の計算 149
   9 譲渡に係る対価の額(原則) 153
   10 譲渡に係る対価の額(特例) 155
   11 交換により取得した資産の場合 157
   12 適用時期 159
  Ⅱ 譲受法人が譲渡損益調整資産の譲渡等をした場合の譲渡
   法人における譲渡損益の認識 161
   1 譲渡損益調整額の認識 161
   2 譲渡等事由の発生(全部認識) 162
   3 100%グループ内における再譲渡 164
   4 適格分割型分割による外部の分割承継法人への移転(全部認識) 166
   5 譲受法人が公益法人等に該当することとなった場合(全部認識) 167
   6 評価換えがあった場合(全部認識) 168
   7 減価償却資産の減価償却があった場合(部分認識) 169
   8 簡便法改正の意義 172
   9 繰延資産の償却があった場合(部分認識) 174
   10 同一銘柄の有価証券の譲渡を行った場合(部分認識) 176
   11 償還有価証券の調整差損益の益金・損金算入を行った場合
    (部分認識) 177
   12 連結納税開始・加入時の時価評価損益の認識をした場合
    (全部認識) 178
   13 中間申告の場合 178
  Ⅲ 完全支配関係を有しないこととなった場合の譲渡損益の認識 180
     完全支配関係がなくなった場合 180
  Ⅳ 連結納税開始・加入時の時価評価の場合の譲渡損益の認識 183
     譲渡法人が資産の時価評価を行う場合 183
  Ⅴ 完全支配関係のある内国法人と適格合併等をした場合の取扱い 185
   1 譲渡法人が適格合併により解散した場合 185
   2 譲渡損益調整勘定を負債又は資産に含む規定 188
   3 譲受法人が適格合併により解散した場合等 191
  Ⅵ 譲受法人における取得価額 194
   1 譲受法人における取得価額(原則) 194
   2 譲受法人における取得価額(特例) 195
  Ⅶ 譲渡法人と譲受法人間の通知義務 197
     通知義務の概要と通知方法 197
  Ⅷ グループ法人間の非適格合併等 200
 〔1〕グループ法人間の非適格合併における譲渡損益調整資産の損益調整 200
   1 譲渡損益調整資産の移転をした被合併法人の処理(1) 200
   2 譲渡損益調整資産の移転をした被合併法人の処理(2) 202
   3 合併法人における譲渡損益調整資産の取得 205
   4 被合併法人の株主における株式譲渡損益の不計上等 207
   5 合併法人における資産調整勘定と負債調整勘定 209
   6 譲渡損益調整勘定を有する法人が非適格合併をした場合の処理 210
   7 自己創設のれん 212
   8 欠損金の使用制限が課される非適格合併 212
   9 非適格合併に係る合併法人における注意点 214
   10 譲渡損益調整勘定の合併法人への引継ぎの可否 215
   11 合併対価が譲渡損益調整資産である場合の譲渡損益の繰延べ 226
 〔2〕完全支配関係法人間の非適格分割型分割における譲渡損益調整資産の
   損益調整 228
   1 非適格分割型分割となる場合 229
   2 分割法人の株主に対する譲渡損益調整資産のみなし譲渡 230
   3 分割法人における譲渡損益調整資産の処理 232
   4 分割承継法人における分割資産の取得価額 234
   5 分割法人の株主における分割法人株式の譲渡に係る処理 235
   6 分割対価資産が譲渡損益調整資産である場合の分割法人の処理 237
   7 分割対価資産が譲渡損益調整資産である場合の分割承継法人の処理 239
   8 分割対価資産が譲渡損益調整資産である場合の分割法人の株主の処
    理 240
   9 みなし事業年度の廃止の影響 242
   10 減少する資本金等の額及び利益積立金の額の計算 243
  〔3〕完全支配関係法人間における非適格株式交換等に係る
    完全子法人の有する資産の時価評価損益 245
   1 制度改正の趣旨・背景 245
   2 非適格株式交換及び非適格株式移転 247
   3 時価評価資産を有する完全子法人 249
   4 完全親法人における完全子法人株式の取得価額 250
   5 完全子法人となる法人の株主における株式の譲渡損益の繰延べ 251

 第3章 グループ法人間の寄附 254
   1 制度創設の理由 256
   2 「法人による完全支配関係」とは 262
   3 寄附金・受贈益とは 263
   4 現金による寄附があった場合の処理 264
   5 現金以外の資産による寄附があった場合の処理 274
   6 無利息貸付けが行われた場合の処理 277

 第4章 配当・株式の譲渡損益の取扱い等 280
  Ⅰ 完全子法人からの配当の益金不算入(負債利子控除の不適用) 280
   1 「完全子法人株式等」の定義 281
   2 完全子法人からの配当の益金不算入の適用の可否(個人による完全支配
    関係がある場合) 282
   3 完全子法人からの配当の益金不算入の適用の可否(グループ内で株式の
    持ち合いがある場合) 283
   4 配当計算期間の中途において株式を取得した場合 285
  Ⅱ 控除負債利子の計算における簡便法の基準期間 289
     簡便法における控除負債利子の計算の基準期間 289
  Ⅲ みなし配当の際の株式譲渡利益額・譲渡損失額の益金・損金不計上 292
   1 個人による完全支配関係 293
   2 株式の譲渡利益額・譲渡損失額の益金・損金不計上措置が適用される
    「みなし配当事由」 294
   3 みなし配当事由が生じた場合の具体的な処理方法 295
   4 みなし配当事由による株式の譲渡利益額・譲渡損失額の益金・損金不計
    上(自己株式が低額で取引された場合) 296
   5 株式の譲渡利益額・譲渡損失額を不計上とすることへの疑問 300
   6 資本金等の額を増減させることの妥当性 303
  Ⅳ 自己株式として取得が予定されている株式のみなし配当の益金算入 307
   1 制度が導入された理由 307
   2 適用の対象となる「自己株式の取得」と「取得されることが予定されて
    いるもの」とは 308
   3 完全支配関係法人のない法人間の取引における適用の可否 310
   4 本措置の適用時期 312

 第5章 組織再編成税制 314
  Ⅰ 現物分配税制 314
   1 制度導入の理由 316
   2 現物分配と組織再編成の違い 320
   3 所得分配と適格現物分配 323
   4 現物資産と金銭によって分配が行われた場合 325
   5 現物分配の処理の時期 327
   6 資産とともに事業・負債が移転した場合 334
   7 「内国法人のみ」とは 338
   8 現物分配と分割型分割 341
 Ⅱ 無対価組織再編成 345
  1 無対価分割の明確化 348
  2 支配関係法人間等における無対価組織再編成 352
  3 無対価組織再編成の課税関係 355
  4 株主における課税関係 364
  5 無対価非適格組織再編成の取扱いと寄附金課税 373
  6 旧法人税法62条の2第2項の規定の削除 389
  7 「訓示的規定」の創設理由 394
 Ⅲ 分割型分割のみなし事業年度廃止に伴う整備 401
  1 みなし事業年度が廃止された理由 401
  2 改正後の分割型分割の処理方法 406
  3 平成22年度改正が分社型分割に与える影響 409
  4 分割型分割における資産等の譲渡・引継ぎの条文構成 410
  5 資本金等の額の引継ぎと法人・株主間の取引の処理 412
 Ⅳ 非適格合併における抱合株式の譲渡利益額・譲渡損失額の不計上 416
  1 抱合株式 417
  2 抱合株式の譲渡損益の不計上 418
  3 抱合株式の譲渡損益を不計上とした理由 420
  4 みなし配当課税 422
 Ⅴ 適格合併等の欠損金引継要件等の改正 423
  1 継続支配要件(5年要件)の見直し 424
  2 「支配関係が継続している場合」から除かれる場合 425
  3 グループ内で設立した法人が複数ある場合の検討 433
  4 支配関係が継続しているか否かの判定 439
  5 最後に支配関係があることとなった日 442
  6 完全支配関係がある内国法人の残余財産が確定した場合の欠損金の
   引継ぎ 448
  7 欠損金の帰属事業年度 451
  8 欠損金の使用制限が課される組織再編成の追加 454
  9 事業を移転しない場合の特例の創設 456
  10 譲渡損益調整勘定と特定資産との関係 459
  11 期限切れ欠損金の取扱い 463

 第6章 中小法人向け特例措置の不適用 470
   1 不適用措置の導入理由 470
   2 対象法人 472
   3 資本金の額の判定時期 473
   4 孫会社等への適用 474
   5 制限の対象となる措置 478
   6 法人税の軽減税率 480
   7 特定同族会社の留保金課税の不適用措置 482
   8 貸倒引当金の法定繰入率 483
   9 交際費の損金不算入制度における定額控除制度 485
   10 欠損金の繰戻還付制度 486
   11 適用時期 487
   12 適用判定 487
   13 申告書別表の記載方法 488

 第7章 連結納税制度 492
  Ⅰ 連結納税の承認申請 492
     連結納税承認申請書の提出期限 493
  Ⅱ 連結納税承認取消事由からの解散の除外 496
   1 連結子法人が解散をした場合のみなし事業年度 497
   2 連結離脱法人の100%子法人の取扱い 498
  Ⅲ 加入時期の特例 501
   1 加入時期の特例適用の可否(1) 502
   2 加入時期の特例適用の可否(2) 504
  Ⅳ 完全支配日以後2か月以内離脱の場合の時価評価の特例 507
     連結加入時時価評価の要否判定及び連結納税の離脱日 508
  V 連結納税への欠損金の持込み 511
     連結納税への欠損金持込みの可否 513
  Ⅵ みなし連結欠損金及び特定連結欠損金の範囲 515
     特定連結欠損金と非特定連結欠損金 519
  Ⅶ 連結グループ外法人との合併・解散による未処理欠損金額の引継ぎ
   等 522
     「連結親法人と完全支配関係のある他の内国法人」とは 523
  Ⅷ 連結欠損金の繰越控除 525
   1 連結欠損金の繰越控除の可否 526
   2 控除額等の計算(1) 528
   3 控除額等の計算(2) 529
   4 控除額等の計算(3) 530
  Ⅸ 投資簿価修正 538
     投資簿価修正の方法 539
  Ⅹ 連結法人間の寄附金と連結法人税個別帰属額 544
     連結法人税個別帰属額の精算の必要性 545

 第8章 清算税制 550
   1 残余財産確定後の収益・費用と税務申告 551
   2 残余財産確定の日の譲渡損益調整勘定 559
   3 破産、特別清算をした場合と確定申告の留意点 560
   4 特別償却、特別控除、準備金と解散、清算時の留意点 572
   5 解散をした場合のみなし事業年度 573
   6 清算により残余財産が残らない場合の手続き 574
   7 清算により残余財産が残らない場合の残余財産の確定日 575
   8 欠損金の引継ぎと残余財産が確定 578
   9 期限切れ欠損金の取扱い 583
   10 解散をした場合の仮装経理と法人税額の還付 585
   11 欠損金の繰戻還付の手続き 587
   12 残余財産がない場合のみなし配当の有無 588
   13 清算会社の株主の株式消滅損益・資本金等の額 589
   14 清算により残余財産がある場合の残余財産の確定と税務申告 591
   15 税務上の残余財産とは 593
   16 残余財産の確定日はどの時点をいうのか 594
   17 残余財産の分配による非適格現物分配の税務処理 596
   18 残余財産の分配による適格現物分配の税務処理 598
   19 最後事業年度の事業税 601
   20 最後事業年度の貸倒引当金 602
   21 残余財産の確定と欠損金の引継ぎ等 603
   22 残余財産の分配と特定資産譲渡等損失額 604
   23 残余財産の分配みなし配当 605
   24 解散後の事業年度の留保金課税 608
   25 解散後のその他の諸規定 609
   26 「残余財産の分配又は引渡し」の資本等取引への追加 611

第2部 【鼎談】
    グループ法人税制の論点と実務対応 616

第3部 <資料> 国税庁 質疑応答事例
   平成22年度税制改正に係る法人税質疑応答事例
   (グループ法人税制関係)(情報) 694