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どこがどうなる!? 平成26年度税制改正の要点解説

朝長 英樹【監修】

阿部 泰久 小畑 良晴 掛川 雅仁 塩野入 文雄 竹内 陽一
【編著】
幕内 浩  浅野 洋  妹尾 明宏 飯田聡一郎 郭 曙光 
神谷 紀子 小林磨寿美 佐々木克典 武地 義治 内藤 忠大
中尾 健  鈴木 達也 長谷川敏也 棟田 裕幸 大塚 直子
新沼 潮  浅野 充昌【共著】

A5判・単行本・248ページ

清文社(2014/03/24)

定価1,000円(税別)

 

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は し が き

 

 平成26年度税制改正は、我が国の現在の最重要課題がデフレからの脱却と経済再生であるという認識の下で、企業等の投資行動を加速化させる等の観点から行われた改正となっています。従来の改正と比べて、平成26年度税制改正は、政策措置という性格がより一層明確になっていると言えます。


 平成25年6月14日に閣議決定された「日本再興戦略」には、既に民間投資を活性化させる税制措置が盛り込まれており、平成25年10月l日には、年末の通常の年度改正から切り離して前倒しで与党の「民間投資活性化等のための税制改正大綱」が出されました。この秋の大綱には、経済の好循環をもたらすための投資減税、所得拡大税制などが盛り込まれていました。


 そして、平成25年12月12日には、与党からこれらの改正項目を含む「平成26年度税制改正大綱」が公表されました。


 このように、平成26年度税制改正は、従来の改正と比べると、異次元のスピードで行われた改正と言っても良いものとなっています。


 しかし、この平成26年度税制改正では、上記に触れた政策措置に止まらない重要な改正も行われます。


 消費税の簡易課税、給与所得控除、復興特別法人税のl年前倒し廃止、地方法人課税の偏在是正、車体課税などの見直しは、税制抜本改革法「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」(税制抜本改革法)の宿題として残った改正項目です。


 給与所得控除の見直しやゴルフ会員権の譲渡損失の取扱いの見直しは、平成12年の政府税制調査会の中期答申において述べられていたものであり、財務省の息の長い取組みが感じられる改正項目となっています。


 また、平成26年度の改正項目ということではありませんが、平成26年4月l日からの消費税の税率の引上げは、非常に重要な改正であり、経済に少なからず影響を与えるものであることから、経済対策として、民間投資と消費の拡大のために、投資減税に加えて交際費課税の緩和などが行われている点も、平成26年度税制改正の特徴の一つです。


 これらの改正に加えて、非居住者・外国法人課税の仕組みを総合主義から帰属主義に基づくものに変更する改正も、平成26年度税制改正の非常に重要な改正となっています。


 この総合主義から帰属主義への変更は、我が国の非居住者・外国法人課税の半世紀ぶりの大改正であり、改正事項も非常に広範にわたるものとなっていますので、政省令や通達まで、細部にわたって取扱いを確認する必要があります。


 この総合主義から帰属主義への変更に伴い、外国税額控除における国外所得に関する定めも、抜本的に改正されます。


 企業が一層グローバルに活動するようになった現在、この外国税額控除の改正は相当数の納税者に影響を与えることとなりますので、この改正に関しても、細部まで十分に注意しておく必要があります。


 このように、平成26年度税制改正は、近年の改正の中でも、特に、多岐にわたる重要な改正となっています。


 今後、法人税率の引下げ等も課題となってくるものと思われますが、経済に深くかかわる税制の勇気ある大胆な改正が我が国の経済の再生に繋がることを期待したいと考えます。

 

 


 なお、本書は、「平成26年度税制改正の大綱」(平成25年12月24日 閣議決定)に基づき起稿し、改正法律案に示された改正規定を追記する等によって作成しています。


 本書が皆様方の日々の実務に少しでもお役に立つようであれば、幸いです。 最後に、本書の刊行にご助力を賜わりました清文社の宇田川真一郎氏に著者を代表して御礼を申し上げます。

 

 

                                             編著者を代表して

                                  日本税制研究所 代表理事 朝長英樹
                                               税理士 竹内陽一

目 次

 

Ⅰ 法人税関係の改正

        l  生産性向上設備投資促進税制の創設・産業競争力強化法・007

        2  中小企業投資促進税制の上乗せ措置の創設・延長・020

        3  中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の延 長・031

        4  環境関連投資促進税制の対象設備の一部除外・032

        5  雇用者給与等支給額が増加した場合の特別控除制度(所得拡大促進 税制)の拡
         充・033

        6  復興特別法人税のl年前倒し廃止と法人実効税率引下げの見送り・050

        7  交際費課税の特例の拡充・延長・054

        8  研究開発税制の拡充(試験研究費)・055

        9  ベンチャー投資を促進するための税制措置の創設・059

      10 創業促進のための登録免許税の税率の軽減措置の創設・066

      11 事業再編を促進するための税制措置の創設・067

      12 海外投資等損失準備金制度の延長・073

      13 中心市街地活性化のための税制措置の創設・075

      14 既存建築物耐震改修投資促進税制の創設・077

      15 国家戦略特別区域に係る税制措置の創設・078

      16 地方法人課税の偏在是正・081

      17 沖縄振興に関する税制措置・089

      18 復興支援税制・098

      19 特定資産の買換え特例・099

      20 その他の延長事項等・102

 

 

Ⅱ 個人所得税関係の改正

        l  給与所得控除の上限引下げ・105

        2  NISA 口座の再設定(複数口座可能)・106

        3  ESOP 信託の特定口座受入れ・109

        4  特定公社債からの同族会社発行社債の除外等・110

        5  非適格新株予約権の権利行使前譲渡について給与課税等とする・112

        6  有価証券の国外移管調書の提出・117

        7  老朽化マンションの建替え等の促進に係る特例・118

        8  中古住宅取得後に耐震改修工事を行う場合における住宅ローン減税 の適用
         ・121

        9  住宅ローン減税(平成25年度税制改正分)・123

      10 現金給付制度「すまい給付金」・130

      11 公益法人等へ寄附した場合の譲渡所得税の非課税措置の見直し・134

      12 個人事業者に係る事業再生税制の創設・137

      13 免責許可の決定等による債務免除益に対する課税の特例の創設・139

      14 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例の見直し・140

      15 生活に通常必要でない資産の対象資産の拡大・146

      16 雑損控除の計算の基礎となる損失金額の計算の見直し・147

      17 企業型確定拠出年金の拠出限度額の引上げ・149

      18 公的年金等の確定申告不要制度等の改正・150

      19 小規模共済等事業者の拡大・153

      20 株式併合の端数株式のみなし配当除外・会社法改正による買取り請 求権の付与
         ・156

      21 特定の居住用財産の買換え等の場合の長期譲渡所得の課税の特例の 対価上限の引
         下げ・157

      22 その他の土地・住宅税制の延長事項・158

 

 

Ⅲ 相続税関係の改正

        1  医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の創設・161

        2  農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予の見直し・166

        3  住宅取得等資金に中古住宅の耐震工事代金を追加・170

        4  相続財産贈与非課税特例に博物館等地方独立行政法人の追加・171

        5  幼保連携型認定こども園寄付等相続税非課税等・174

        6  小規模宅地等の減額特例(1棟の建物の同居基準の緩和)(平成25 年度税制改
         正分)・177

 

 

Ⅳ 消費税関係の改正

        l  簡易課税のみなし仕入率の見直し・181

        2  金銭債権の譲渡の5%特例・184

        3  軽減税率の導入・185

        4  訪日外国人免税・185

 

 

Ⅴ 納税環境の整備

        l  換価の猶予の特例の創設と納税の猶予及び換価の猶予の見直し・ 187

        2  国税不服申立制度の見直し・195

        3  調査の事前通知・200

        4  延滞税等の見直し(平成25年度税制改正分)・201

 

 

Ⅵ 国際税制関係の改正

        l  総合主義から帰属主義への移行・204

        2  移転価格税制における「みなし国外関連取引」の範囲の拡大・235

 

 

Ⅶ 自動車の車体課税の見直し・237

 

 

Ⅷ 税制改正の経過・244