書物・出版物

どこがどうなる!?平成29年度 税制改正の要点解説

【監修】  朝長 英樹

【編著】  小畑 良晴 塩野入文雄 竹内 陽一 掛川 雅仁
【共著】  幕内 浩  神谷 智彦 浅野 洋  妹尾 明宏
      有田 賢臣 大塚 直子 大槻佳代子 神谷 紀子
      小林磨寿美 佐々木克典 鈴木 達也 武地 義治
      内藤 忠大 中尾 健  西山 卓  長谷川敏也
      藤野 智子 棟田 裕幸
【執筆協力】朝長明日香

A5判・単行本・173ページ

清文社(2017/4/5)

定価1,000円(税別)

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は し が き

 

 平成29年度税制改正は、我が国経済の成長力の底上げを図るため、就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築するという観点、経済の好循環を促すという観点、我が国企業の海外における事業展開を阻害することなく国際的な租税回避により効果的に対応するという観点等から行われています。

 

 法人税関係では、組織再編成税制の大幅な見直し、「役員給与」の損金算入範囲の拡大、研究開発税制の拡充、所得拡大促進税制の拡充、申告期限の延長などに注目しておく必要があります。

 

 組織再編成税制の改正は、支配関係のない法人のスピンオフ(事業分割)を適格組織再編成として課税を繰り延べる措置、スクイーズアウト(少数株主に金銭等を交付して株主から排除すること)を包括的に適格組織再編成として課税を繰り延べる措置、適格要件の一部緩和などとなっており、従来の取扱いが大幅に見直されることとなっています。

 

 「役員給与」に関しては、利益連動給与や事前確定届出給与の取扱いが緩和され、多様な業績連動報酬や株式報酬の導入が行いやすくなりますが、一方で、ストックオプションや利益連動の退職給与の取扱いが厳格化されます。

 

 研究開発税制に関しては、総額型を試験研究 費の増加率に応じて税額控除できる仕組みとし、オープンイノベーション型の 利用促進を図るために対象費目を拡大するなどの拡充措置が講じられます。所得拡大促進税制に関しては、2%以上の賃上げを行う場合に税額控除額が大きく増加する措置が講じられます。また、申告期限に関しては、最大6か月(改 正前は最大3か月)まで延長可能となります。

 

 所得税関係では、就業時間を調整すること(パート収入を103万円以内に抑えること)を意識せずに働くことができる環境を創るという観点から、配偶者控除・配偶者特別控除の見直しが行われます。

 

 この配偶者控除・配偶者特別控除の見直しにより、配偶者控除等(38万円)における配偶者の収入の上限は、103万円から150万円になります。ただし、この見直しは、税収中立という観点から行われるものであり、納税者本人に所得制限が設定され、控除額は、給与収入1,120万円から逓減し、1,220万円で消失することとなります。

 

 国際税制関係では、「BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト」の合意事項の実施に向けて、外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)に関して、租税回避リスクを外国子会社の外形(税負担率)ではなく、個々の活動内容(所得の種類等)により把握する仕組みへの見直し等が行われます。

 

 最も懸念されたトリガー税率廃止の影響は、結果的には、ほとんどない状態になっていますが、一部、課税強化となる部分もありますので、外国に進出している企業は、注意が必要です。

 

 その他、中堅・中小事業者を支援するという観点から行われる措置である地域中核企業向け設備投資促進税制(地域未来投資促進税制)の創設や中小企業 向け設備投資促進税制の拡充、地方創生を支援するという観点から行われる地方拠点強化税制の拡充(無期・フルタイムの新規雇用への支援の拡充)なども、注目されます。

 

 このような平成29年度税制改正は、特に、組織再編成税制の改正、「役員給与」の取扱いの改正、研究開発税制の改正、外国子会社合算税制の改正などに、細部の取扱いが分かり難い部分が多く生じてくることが予想されます。

 

 このため、政省令、通達及び国税庁から発遣される情報等に、十分に注意しておく必要があります。

 

 なお、本書は、平成29年度税制改正の大綱」(平成28年12月22日 閣議決定)に基づき起稿し、改正法律案に示された改正規定を追記する等によって作成しています。

 

 本書が皆様方の日々の実務に少しでもお役に立つようであれば、幸いです。最後に、本書の刊行にご助力を賜わりました清文社の宇田川真一郎氏に編著者を代表して御礼を申し上げます。

 

 

                                                               著者を代表して

                                         日本税制研究所 代表理事 朝長 英樹

                                                           税理士 竹内 陽一

目 次

 

Ⅰ 平成28年11月消費税法改正

 

1  10%引上げの平成31年10月1日への変更・5

 

2  具体的内容・7

 

 

Ⅱ 個人所得税関係の改正

 

1  配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し・19

 

2  積立 NISA の創設・25

 

3  住宅の耐久性向上改修工事に係る特例措置の拡充・30

 

4  所得税の届出書・35

 

5  医療費控除(セルフメディケーション税制を含む)の添付書類等の 見直し・37

 

6  上場株式配当等と個人住民税・39

 

 

Ⅲ 災害に関する税制上の措置

 

1  所得税・41

 

2  資産税・45

 

3  法人税・49

 

4  消費税・53

 

5  災害等による期限延長制度における延長手続の拡充・54

 

 

Ⅳ 資産税関係の改正

 

1  国外財産に対する相続税等の納税義務の範囲の見直し・55

 

2  取引相場のない株式の評価の見直し・60

 

3  広大地の評価の見直し・65

 

4  株式保有特定会社の判定基準の見直し・67

 

5  立木の評価・69

 

6  上場株式等の物納・70

 

7  非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の見直し・72

 

8  居住用超高層建築物の固定資産税等・79

 

9  保育園と固定資産税・83

 

 

Ⅴ 法人税関係の改正

 

1  研究開発税制の拡充・重点化・85

 

2  雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除(所得拡大促進税制) の見直し・92

 

3  役員給与の改正・98

 

4  組織再編成税制の改正・106

 

5  経営力向上計画の認定と税制支援措置・131

 

6  中小企業の設備投資に係る固定資産税の軽減措置の拡充・135

 

7  中小企業投資促進税制の対象資産の見直し・138

 

8  中小企業経営強化税制の創設・141

 

9  中小企業者等に係る軽減税率の特例の延長・143

 

10 中小企業向けの租税特別措置の要件の見直し・144

 

11 特定の事業用資産の買換え特例の延長と一部改正・146

 

12 地域中核企業向け設備投資促進税制(地域未来投資促進税制)の創 設・148

 

13 申告期限の見直し及び納税地の異動届出等・151

 

14 増額更正時の連動的税額控除額の増加・154

 

 

Ⅵ 医療法人に関する税制改正

 

1  持分のない医療法人への移行推進制度の拡充・157

 

2  医療法人の分割制度の整備・160

 

 

Ⅶ 国際課税関係の改正(外国子会社合算税制の見直し)・163