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どこがどうなる!? 令和4年度 税制改正の要点解説

【監修者】 朝長 英樹
【編著者】 小畑 良晴 塩野入文雄 竹内 陽一 掛川 雅仁
【共著者】 幕内 浩  秋本潤一郎 遠藤 亮輔 浅野 洋     
       阿部 隆也 大塚 直子 岸本 政昭 小林磨寿美    
       近藤 光男 佐々木克典 佐藤 増彦 鈴木 達也    
       武地 義治 内藤 忠大 中尾 健  西山 卓     
       新沼 潮  長谷川敏也 藤野 智子

 

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は  し が き

 

  令和4年度税制改正は、成長と分配の好循環の実現に向けて、多様なステー クホルダーに配慮した経営と積極的な賃上げを促す観点から賃上げに係る税制 措置を抜本的に強化するとともに、スタートアップと既存企業の協働による オープンイノベーションを更に促進するための措置を講ずるとされています。 また、カーボンニュートラルの実現に向けた観点等を踏まえ、住宅ローン控除 等を見直し、加えて、景気回復に万全を期すため、土地に係る固定資産税等の 負担調整措置について、激変緩和の観点から所要の措置を講ずるとされていま す。

 

  このように、令和4年度税制改正においても、多くの項目の改正が行われる わけですが、令和4年度税制改正は、賃上げ促進税制の大幅な拡充が大きな特 徴となっていると捉えてよいと思われます。

 

  令和3年度税制改正においても、賃上げを促進する税制措置が講じられてお り、青色申告法人を対象とする人材確保等促進税制と呼ばれるものと中小企業 者を対象とする所得拡大促進税制と呼ばれるものが存在していました。令和3 年度税制改正においては、人材確保等促進税制における税額控除額は新規雇用 者給与の15%とされていましたが、これが令和4年度税制改正によって給与増 加額の15%又は25%まで拡充され、同じく、所得拡大促進税制における税額控 除額は給与増加額の15%とされていましたが、これが同改正によって給与増加 額の15%又は30%まで拡充されます。これらの二つの税制の適用要件について も、実質的な緩和が行われていますので、適用を受ける納税者の数と控除税額 のいずれもかなり増加する可能性があります。

 

  その他の法人税関係の改正の中では、オープンイノベーション促進税制を拡 充する改正が注目されます。これは、出資の対象法人に、設立後15年未満(改 正前は設立後10年未満)の法人で売上高に占める研究開発費の割合が10%以上 の赤字法人を追加する等の改正を行うものです。

 

  また、少額減価償却資産から「貸付用資産」を除く改正も、実務家にとって は、注目されるところです。この改正は、ドローン、建設用資材、LED 照明、 中古コンテナなどを取得して貸付けを行い、その取得価額を一時の損金としな がら貸付けによる収入は期間の経過とともに益金に計上するという方法によ り、所得の計上を繰り延べるケースが相次いでいることに対する対応として行 われるもので、令和4年4月1日以後に取得又は製作若しくは建設をする資産 について適用されます。

 

  令和4年4月1日から適用されるグループ通算制度に関しても、「投資簿価 修正」をはじめとする改正が行われており、適用開始後の法人税額に影響を与 えることとなりますので、対象法人は、必ず、政省令も含めて、改正内容の確 認を行っておく必要があります。

 

  また、令和4年度税制改正には、改正が遡及して適用されるものが存在しま すので、そのようなものについては、更正の請求の要否を確認しなければなら ないということに注意する必要があります。令和3年3月11日の最高裁第一小 法廷判決によって法人税法施行令23条1項4号の一部が違法であるとされたこ とを受けて行われるもので、資本の払戻しにおける払戻等対応資本金額等及び みなし配当の計算に関する改正、そして、子会社からの配当と子会社株式の譲 渡を組み合わせた租税回避防止措置を見直す改正がこれに該当します。

 

  所得税関係の改正の中では、住宅ローン控除制度の改正が注目されるところ です。住宅ローン控除制度に関しては、適用期限が4年間延長され、省エネ性 能等の高い認定住宅等について、新築住宅等・既存住宅ともに借入限度額の上 乗せが行われ、控除率は0.7%(改正前は1%)に引き下げられるものの、控 除期間は13年とされます。

 

  資産税関係の改正の中では、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置を見 直す改正が注目されます。この改正は、格差の固定化防止等の観点から、非課 税限度額を1,500万円又は1,000万円(令和2年4月1日から令和3年12月31日 まで契約分)から1,000万円又は500万円に引き下げた上で、適用期限を2年間 延長する改正となっています

 

  また、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する仕組みとするのか否かということも関心を集めていたわけですが、これに関しては、「資産移転時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める」(令和3年12月10日 自由民主党 公明党「令和4年度税制改正大綱」11頁)とされています。

 

  なお、本書は、「令和4年度税制改正大綱」(令和3年12月10日 自由民主党・公明党)及び「令和4年度税制改正の大綱」(令和3年12月24日 閣議決定)に基づいて起稿し、改正法律案に示された改正規定を追記する等によって作成しており、図表に関しては、改正内容等を広くかつ正確に伝えるために、自由民主党税制調査会に提出された資料、財務省及び総務省が作成した資料、経済産業省等が作成した資料なども利用させて頂いているということを予めお断りしておきます。

 

  本書が皆様方の日々の実務に少しでもお役に立つようであれば、幸いです。

 

  最後に、本書の刊行にご助力を賜わりました清文社の宇田川真一郎氏に編著者を代表して御礼を申し上げます。

 

 

                                                      編著者を代表して

                                                      日本税制研究所 代表理事

                                                              代表理事 朝長英樹

                                                              税理士 竹内陽一

目 次

 

Ⅰ 法人税関係の改正

 

1 賃上げ促進税制(人材確保等促進税制)の改組・延長・1

 

2  (中小企業向け)賃上げ促進税制の拡充・延長・12

 

3 賃上げ促進税制の法人事業税(外形標準課税)・法人住民税におけ る取扱い・21

 

4 オープンイノベーション税制の見直し・延長・25

 

5 5G 導入促進税制の見直し・延長・29

 

6 法人事業税の改正・35

 

7 地方拠点強化税制の拡充・41

 

8 資産を取得後翌年度の補助金等の圧縮記帳調整・46

 

9  少額減価償却資産の対象資産の見直し等・49

 

10 交際費等の損金算入特例の改正、中小企業者等の少額減価償却資産 の損金算入特例の延長・51

 

11 資本の払戻しにおける払戻等対応資本金額等とみなし配当の計算の 見直し・55

 

12 子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避措置 の見直し・58

 

13 特定税額控除規定の不適用措置・66

 

14 完全子法人株式等及び関連法人株式等の配当に係る源泉徴収の見直 し・68

 

15 電子取引データの出力書面等による保存措置の廃止(令和3年度税 制改正)に関する宥恕措置・71

 

16 グループ通算制度の改正・74

 

16-1 投資簿価修正等・74

 

16-2 利子税の取扱い・82

 

16-3 支配関係5年継続要件の見直し・82

 

16-4 外国税額控除・85

 

Ⅱ 消費税関係の改正

 

1 適格請求書等保存方式の概要・88

 

2 適格請求書発行事業者の登録手続きの見直し・100

 

3  その他の措置・103

 

Ⅲ 納税環境の整備

 

1  記帳義務の不履行及び特に悪質な納税者への対応・106

 

2 修正申告書・更正の請求書の記載事項の整備・114

 

3 納税地の変更届の提出不要・117

 

4 社会保険料控除等の証明の電子化・118

 

Ⅳ 個人所得税関係の改正

 

1  住宅ローン減税等の住宅取得促進策・121

 

2 2年延長及び3年延長(資産課税)・128

 

3 既存住宅の耐震改修及び特定改修工事に係る特別控除・133

 

4 大口株主要件等の見直し・144

 

5 上場株式等の配当所得等に係る課税方式の見直し・154

 

6 財産債務調書制度の見直し・158

 

7 個人住民税の合計所得金額の改正・163

 

Ⅴ 資産税関係の改正

 

1 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課 税・166

 

2  非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度(法人版 事業承継税制)・171

 

3 所有者不明土地関係の税制改正と民事基本法の改正等・173

 

3  受益者別信託調書の見直し・190

 

Ⅵ その他の改正

 

1  固定資産税等の負担調整措置・192

 

2  税理士制度の見直し・196